Chef's Story
オーナー パティシエ 栗本佳夫
- 2001
- ジジャパンケーキショー コンフィズリ ショコラの部-銅賞
- 2002
- ジャパンケーキショー 味と技のピエモンテ-銅賞
- 2003
- ジャパンケーキショー ショコラのピエモンテ-1位
- 2004
- 内海杯 あめ細工-銀賞
- 2005
- クープ・ド・モンド 国内選考会-優勝(日本代表)世界大会-4位
- 2006
- 1月7日ガトー・デュラ・メール・スリアン オープン
- 職 歴
- ヒルトンホテル、名古屋マリオットアソシアホテル、オテルドミクニ(研修)、ミクニナゴヤ、街のケーキ店多数
お菓子への思い
ケーキへのこだわり
小学生の男の子は、女性雑誌に掲載されているクリスマスケーキのページを見てこう思った。「僕にも作れるんじゃないか」はじめて作ったケーキを母や姉に食べてもらった時、とても喜んでくれた。果たして本当に美味しかったのかどうかは別として、彼にとってそれは衝撃だったという。混ぜるだけ、市販のクッキーをつぶして固める、型に入れて冷やすといった簡単なケーキなのだが、一生懸命作ったものがこんなに喜んでくれるということが衝撃だった。後にその少年は、洋菓子のオリンピックといわれている世界大会の日本代表へと成長していく。
生涯でいちばん濃い1年間
「ものを作ること自体が好きだったんですよ、手作業でね。家を建てる人とか、そういう人になりたかった」あの時から彼はケーキを作り続けてはいたがそれは趣味というレベルで、工業高校の電気科に通いながら現実に直面していた。夢を抱いて入学したが2年の頃からは遅刻の帝王と呼ばれるようになっていた。就職活動の最中「面白い雑誌(案内)があるな」と手に取って見たのが専門学校の案内。「何だこれは!今まで作っていたケーキは何だったんだ!」これまでとは次元の違う世界を目の当たりにして、くすぶっていた心に衝撃が走った。彼の頭にはもう就職という二文字はなかった。まったく畑違いであるケーキの専門学校へ進んだ。その頃をこう語る。「とにかく楽しかった。高校の3年間よりもこの1年間の方が濃かったです。生涯の中でいちばん勉強しました。自分でやると決めたから、そこまでやれたんでしょう。遅刻しなくなりましたから、いやホントですよ」
どうしてそんなに流行るんだろう
まずはホテルに就職した。「幅は広がるけれど、ひとつのことに集中できない。ケーキにこだわりたい、でも思うようにいかない」悩んだ彼は街のケーキ屋さんの門をたたき、ひとつひとつの基本を勉強しはじめた。ひとつのお店では満足できず次の地域イチバン店へ。それを繰り返した。店を変えればまた一からやり直しになるにも関わらず、いったい何が彼をそこまでかき立てたのだろうか。「どうしてそのお店がそんなに流行るのか。美味しさの秘密は?美味しさ以外に何かあるのか?とにかく勉強したい、吸収したい」当時はそんなことばかり考えていたという。その後またホテルで勤めることになるが、やはりこだわりに合わなくていつもいらだちを感じていたという。「お客さんをどう呼び込んでどう喜ばせてあげて・・・その喜ばせ方ですよね。どう気持ちよく店に入って、どう気持ちよく帰っていただくか」納得できるものを探し続けた。
フランスじゃなくてもできる
「フランスへ行きたい」でも料理長の返答はこうだった。「フランスじゃなくてもできる」彼はその言葉に心を打たれた。「そこで何をやって何を学んで何をこれから生かせるかが一番大切なんだから、経歴なんて関係ない」東京の某フレンチレストランのデザート部門へ行ってみないかと勧められた。そこは死ぬほど辛いと噂されているところだったが彼は「行きます!面白そうじゃないですか」と即答した。「自分の考えが変わりました。食材の大切さ、ハシのハシまで使うということを改めて知りました。いらないと思って捨てているもの、それは考え方1つでどんな物にもかえることができると。限られた物を最大限に生かし満足する作品を作れという発想なんですよ。とても新鮮でした」
作る時に考えていること
「食べた人が喜ぶことをイメージしながら作る。それがいちばん楽しいですね。笑顔の瞬間が本当にうれしいんですよ。その気持ちで作る。これだけは譲れないです。素材よりも何よりもいちばん大切なのはそこだと思っています」この譲れない心は少年の頃からあったという。東京から帰ってきてお客さんと接する場面がいろいろできた。お菓子教室やイベント。接することは本当に楽しいと感じていた。「作ったものを食べていただきながら会話が弾む。そういう場を自由に持てるということ。もしかしたらこれが本当の目標かも知れない。望んでいたものかも知れない」彼はそう感じはじめていた。
お客さまはケーキに何を望んでいるのか
彼はこう言い切る。「ケーキ作りというのはひとつの手段だと思っています」何かを達成するには何か手段がいる。ケーキは、笑顔や幸福そういう気持ちにするための手段のひとつだという。「私ができることはケーキをつくること。他のことをやろうとは思いません。私のケーキを手段として使っていただいて笑顔になっていただければ、それほどうれしいことはない」あくまでもケーキは主役ではないと強調する。笑っている時が一番幸せを感じている時。だから笑顔をいっぱいつくりたい。それが彼の根底にある。「材料とか健康志向とか色とか、大切ですよね。でもそれはもう当たり前なんですよ。お客さまはケーキに何を望んでいるのか。本当に小さいものだけれど、そこに幸せがあるからだと私は思っています。この先もずっと私はそれをやり続けたい」